こんにちは。kuma&nomiです。

松茸は高いキノコとして知られています。松茸の香りといえば私は永谷園のお吸い物 松茸の味を連想します。そのお吸い物には松茸のかけらがちょこっと入っていたような記憶があります。記憶があると言ったのは、子供の頃はよく永谷園のお吸い物を食べていましたが、今はもう何年も食べていないので、どうなっているかわからないからです。

化学的に考えてみたら本物の松茸がなくても松茸オールや桂皮酸メチルを加えれば、それなりの香りがするかもしれませんね。でも、味付けが重要ですので、バランスが難しそうです。

今日は松茸オールの分子構造についてのお話です。桂皮酸メチルというのもありますが、それは最後に記述します。

松茸オールのIUPAC名をもとに構造式を書いてみよう

松茸オール(1-octen-3-ol)
松茸オール

この化合物はIUPAC名が1-octen-3-olです。IUPAC名というのは、分子を規則に則って組み立てることができる系統的な名称です。それでは、組み立ててみましょう。

まず、octenのところのoctに注目します。この化合物の主鎖は炭素数8個のオクタン(octane)を基本としています。下の表のn=8に相当します。蛸(タコ)は英語でoctopusといいますね、足が8本だからです。

飽和炭化水素 アルカン(alkane)の一般式はCnH2n+2
n=1 メタン methane:CH4
n=2 エタン ethane:C2H6
n=3 プロパン propane:C3H8
n=4 ブタン butane:C4H10
n=5 ペンタン pentane:C5H12
n=6 ヘキサン hexane:C6H14
n=7 ヘプタン heptane:C7H16
n=8 オクタン octane:C8H18
n=9 ノナン nonane:C9H20
n=10 デカン decane:C10H22
n=11 ウンデカン undecane:C11H24
n=12 ドデカン dodecane:C12H26
n=13 トリデカン tridecane:C13H28
n=14 テトラデカン tetradecane:C14H30
n=15 ペンタデカン pentadecane:C15H32
n=16 ヘキサデカン hexadecane:C16H34

しかし、octaneではなくoctenとなっています。これは、octenの最後に付いていたeはアルコールを表わすolに変わっているのでocten-3-olとなっているのです。だから、その前の部分はoctenになっています。では、なせoctanではなくoctenなのかというと、C=C二重結合を1個持っているからです。C=C二重結合を持つ化合物はalkane→alkeneと変化します。

例えば、エタン(ethane)の場合はエテン(ethene)となります(CH2=CH2)。でも私達は慣用名でエチレン(ethylene)と言っています。果物の成熟を促すホルモンとして、りんごなどから出てきますよね。ポリエチレンの原料でもあります。

話を元に戻します。炭素数が8個で、C=C二重結合を1個持っていて、アルコール性水酸基(-OH)を1個持っている化合物ということがわかりました。それでは組み立てて見ましょう。

でも、C=C二重結合や水酸基は8個の炭素原子のうちのどこにつけたらいいのでしょう。そのような混乱を起こさないために1-octen-3-olのように位置番号1と3が付けてあるのです。C=C二重結合は1番と2番の炭素Cの間にあるということです。若い数字1個だけでいいので1-octeneとします。この化合物はさらにアルコールにしなければならなので、水酸基を3番の炭素に付けます。もちろん水素原子Hを外して-OHを付けます。すると、下記のようになりますね。

1-octen-3-ol(1-オクテン-3-オール)
松茸オール

CとHとOを使って示性式を書くとCH2=CHCH(OH)CH2CH2CH2CH2CH3となります(私のこの画面上では下付き文字が使えませんので、2と3が下がっていません)。これをいちいち書くのが面倒な時に線で構造式を書くと上記のようなものになります。

慣用名の松茸オールとか言われても、知らなかったら手も足も出ません。構造式なんて書けませんよね。でも、IUPAC名の1-octen-3-ol(1-オクテン-3-オール)は系統的に組み立てることができるように作られているのです。でも、最低限のルールは覚えていないとできません。例えば上記の炭素数に応じた飽和炭化水素の名称も覚えておかなければなりません。もちろん英語の綴りがとても重要です。あくまでもカタカナは英語を日本語に直しただけです。

ケイ皮酸メチル

桂皮酸メチル(methyl cinnamate)も松茸のような香りがするといわれています。桂皮酸メチルはケイ皮酸メチルとカタカナで表記されることもあります。桂皮酸メチルはケイ皮酸のメチルエステルです。例えば、酢酸とエタノールからできたエステルは酢酸エチルといいます。それと同じです。エステルは「酸の水酸基(-OH)とアルコールの水酸基の中の水素原子HがH2Oとして取れることによって脱水縮合した化合物」と定義されています。ケイ皮酸はベンゼン(C6H6)とアクリル酸(CH=CHCOOH)が繋がった形をしている芳香族カルボン酸です(あくまでも形の話であって合成法は同じとは限りません)。その水酸基(-OH)とメタノール(メチルアルコール)CH3OHの水酸基OHの中のHが取れてできた化合物です。桂皮酸メチルを示性式で書くと、C6H5-CH=CH-COOCH3となります(Ph-CH=CH-COOMeでもいいです)。化合物の分類ではカルボン酸のエステルになります。一般にはリン酸H3PO4のエステル(リン脂質やDNA, RNA、リン脂質などが代表的)や硝酸HNO3のエステル(ニトログリセリンや硝酸セルロースや爆薬などが代表的)や硫酸のエステルがありますので、ケイ皮酸メチルはカルボン酸のエステルです。

以上です。IUPAC名の便利さがわかっていただけたと思います。

それでは、また。