こんにちは。kuma&nomiです。

今日は「りんごの蜜」について化学的に考えてみたいと思います。蜜といっても蜂蜜のような甘いものではありません。蜜のように見えるだけです。

リンゴを割った時に、中央の維管束付近に蜂蜜のような色をした物質が蓄積されていることがあります(冒頭の写真)。これはリンゴの品種に依存するのですが、これが入っている代表的なりんごはふじです。

ふじ
りんご

葉っぱで光合成された糖質はソルビトールとなり果実に移動します。そこで多糖類(デンプンなど)に変換され、それがグルコースなどの単糖類やショ糖などの二糖類に再変換されたりします。ふじなどの品種では熟してくるとソルビトールを化学変換する能力が低下してくるので果実中に蓄積されてきます。局所濃度が高くなると、そこに水分が集まってくるのであたかも蜜が入っているかのように見えます。これは浸透圧で説明することができます。

ソルビトール
sorbitol

グルコース
glucose

浸透圧は束一的性質の一つで、溶質(溶液に溶けている分子やイオン)の種類ではなく数に依存する現象です。濃度の高い方に向かって溶媒が移動します。この場合は水ですので、ソルビトールの濃度が高い場所に水が移動していくと考えると理解できます。

例えば、私たちが塩分を摂り過ぎると血圧が上がります。それは、血管の中の血液の中の塩分濃度が上がるので、浸透圧が血管の外の水よりも高くなり、血管の中に水が入ってくるからです。血液の量が増えるから血圧が上がります。

リンゴの中のソルビトールの濃度が高いところに水分が集まってくるとそこの果肉が黄色い蜜のように見えるというわけです(冒頭の写真参照)。そうであればそこの部分が特に甘いわけではないことも理解できます。ソルビトールは甘い物質で、人工甘味料にも使われますが、そこに水が集まってくるということは、そこだけが特に甘いことにはならないわけです。

また、蜜は消えてしまうことがあるそうです。秋に収穫したものが翌年の1〜2月頃には蜜がなくなってしまうのは、水分が抜けていって全体的に水分が少なくなったことにより、蜜のように見えていたところの水の量も少なくなって蜜に見えなくなったと考えれば理解できます。

よって、りんごの蜜は、果実が完熟し、糖分が増し、水分が十分あるという証ということになります。

ちなみにグルコースは環化した形で書かれたり、上記のように環が開いた形で書かれたりします。

β-D-Glucose
b-D-glucose

環化しているのは、水酸基がアルデヒド基を攻撃して付加反応を起こしているからです。水の中では両者が平衡状態にあります。そして、環化した時に、上の構造式で右端の水酸基(-OH)が上を向いているのがベータ型のグルコース(β-D-Glucose)で、下を向いていればアルファ型のグルコース(α-D-Glucose)です。環化していないグルコースが環化する時に、どちらかができます。でも、またすぐに環が開いたりして、水溶液中では平衡状態にあります。環が閉じる反応は「カルボニル基への求核付加反応」とか言われます。また、環が閉じている時の右端の部分の構造は「ヘミアセタール構造」とかいう専門用語があります。

グルコースは還元能力がある

アルデヒド基(-CHO)は酸化されてカルボキシル基(-COOH)になります。つまり、開環したグルコースはアルデヒド基があるので自分が酸化されるので、必ず還元される物質が存在します。つまり、環化したグルコース結晶があったとしても、それを水に溶かすと、ある一定量の開環型が存在することになるので、グルコースの水溶液は還元性を示すことになります。一方、ソルビトールの分子構造を見ると、アルデヒド基のような還元性を示す官能基がないので、ソルビトールは還元能力はありません(還元剤ではありません)。

酸化還元指示薬で、還元されると色が消える色素をグルコースの水溶液に入れると、色が消えます。でも、ジュースが入っていた瓶の中に半分ぐらいまで入れて(空気も入れておいて)、蓋をして激しく振ると空気中の酸素で酸化されて、また元の色素の色に戻ります。そして振るのをやめるとまた還元されて色が消えます。瓶の中の酸素が消費されるまで繰り返すことができます。

それでは、また。