こんにちは。kuma&nomiです。

皆さんはアスパルテームという人工甘味料は知っていますか。名前は聞いたことはあると思います。低カロリーの人工甘味料で、砂糖の100倍の甘さがあるといいます。ペプチド化合物なのですが、最初に作った人はよく舐めたものだと思います。私から見れば命知らずです。だって、実験室で合成したものを舐めるなんて・・・毒かもしれないのに。例えば、リン系の化合物で神経毒がありますね。サリン、タブン、ソマン、VXなどです。でも、私がよく使っていたペプチド合成試薬はDEPCという略号で、シアノリン酸ジエチルとか、Diethyl CyanophooshphonateとかDiethylphosphoryl cyanideとかいう名称で売られていますが、リン原子に付いている4つの置換基がこれらのリン系化合物とちょっと違うだけなんですよ。これが何を意味するか、勘のいい人はわかると思います。特にタブンがDEPCとよく似ています。置換基がDEPCと1個しか違わないのです。まあ、それは置いといて・・・・(これはまた別の話になりますね。最近話題のVXとか)

砂糖の主成分はショ糖(スクロース, Sucrose)です。グルコース(ブドウ糖)とフルクトース(果糖)がα-1,2-グリコシド結合した二糖類です。

ショ糖(Sucrose)
ショ糖

アスパルテーム
アスパルテーム

スクロースは二糖類で、アスパルテームはジペプチドです。どちらもあまり大きくない分子です。ちなみにジペプチドというのは、ペプチド結合が2つあるわけではなく、α-アミノ酸残基が2つあるということです。ここはよく勘違いされるところです。

なぜ甘いかというと、その一つの条件は感覚的には「甘さを感じるレセプターにはまり込むのに適した大きさをしている」ということでしょうか。私はそんな感じで捉えています。タンパク質のような巨大分子になると甘く感じないですし、デンプンも甘くないですよね。適度な大きさの分子であることが必要条件であるような気がします。いわゆるポリマーではなくオリゴマー、しかもかなり小さいオリゴマーという感覚で私は捉えています。ちなみに甘さを感じられるのは4通りの組み合わせがある中で唯一、L-体とL-体の組み合わせだけだそうです。N-(L-α-アスパルチル)-D-フェニルアラニン-1-メチルエステル、N-(D-α-アスパルチル)-L-フェニルアラニン-1-メチルエステル、N-(D-α-アスパルチル)-D-フェニルアラニン-1-メチルエステルは甘くないといいます。むしろ苦いそうです。分子の大きさだけでなく、光学異性体で味が変わるのは興味深い現象です。レセプターとゲスト分子の間の多点相互作用の重要性を示唆しています。

人工甘味料アスパルテームの系統名

L-フェニルアラニンのアミノ基とL-アスパラギン酸のα-カルボキシル基の間で脱水縮合してペプチド結合が生成してできた化合物で、さらに、L-フェニルアラニンのα-カルボキシル基がメタノールとの間で脱水縮合してエステル結合になっています(これはあくまでも分子構造の特徴を述べたものであって、合成経路を示したものではありません)。

慣用名を含んだIUPAC名はN-(L-α-Aspartyl)-L-phenylalanine-1-methyl ester、和名はN-(L-α-アスパルチル)-L-フェニルアラニン-1-メチルエステルです。これをL-フェニルアラニンとかL-アスパラギン酸とかいう、IUPAC名で使用が認められている慣用名を使わずに命名するとすればけっこう複雑です。なので、せっかく便利な慣用名があるので、それを使って命名するのが便利です。ちなみにいずれもいずれもL-体です。私たちの体の中のタンパク質や酵素はL-体のα-アミノ酸が繋がってできたポリペプチドです。

私が合成するとすれば

私が実験室で合成するとすれば、まず、L-フェニルアラニンとメタノールと酸触媒(p-トルエンスルホン酸)を用いてエステル化します。溶媒はトルエンにしてDean-Stark装置で化学平衡を右に移動させる方法をとります。もしトルエンでうまくいかない場合は、溶媒に過剰のメタノールを用いてエステル化します。メタノールをたくさん用いることにより化学平衡が右に偏るからです。得られたL-フェニルアラニンメチルエステルのp-トルエンスルホン酸塩を溶媒THF中、トリエチルアミンの存在下、DEPCを縮合剤としてL-アスパラギン酸のβ-ベンジルエステル(市販品)のカルボキシル基と反応させます。これでアスパラギン酸のα-カルボキシル基がベンジルエステルになったアスパルテームになります。最後に、パラジウム炭素かパラジウムブラックを触媒として水素ガスを反応させてベンジルエステル部分を水素化で開裂させると目的物が得られます。でも、室温では結晶だったとしても、メタノールから再結晶してもなかなか結晶化して析出してくれないような気がします。よって、実験室レベルで扱う時は不純物を含んでいるので精製が困難な油状物のような気がするわけです。だからこそ、甘いことを発見した人は「よくもまあ舐めたものだ」と私は思うわけです。私は命を懸けてまで実験はしたくありません。

それでは、また。