こんにちは。kuma&nomiです。

ウコンに入っている黄色い色素クルクミン(curcumin)の話です。最近の研究ではクルクミンにはあまり効果がなさそうというのがありましたが、だからといってウコンが効かないという話ではなさそうです。

ターメリックはウコンなんですね。

ここでは、クルクミンの構造とIUPAC命名法について書きたいと思います。

クルクミンの構造式からわかること

クルクミンの構造式からわかることは、これは色素であるということと、アルカリ性の水には溶けそうということです。

まず、なぜ色素であるかというと、これは共役系がけっこう長く、吸収する光が紫外領域から可視領域に入っていると考えられるからです。可視光を吸収して黄色になるくらいの長さだからです。これがもっと長くなると橙色、さらに長くなると赤色、さらに長くなるとマゼンタ、さらに長くなると青、といった具合に色素の色が変化していきます。

アルカリ性の水に「溶けそう」と言ったのは、フェノール性の水酸基(-OH)が2個付いているからです。分子の中ほどに付いている水酸基(-OH)はアルコール性の水酸基ですので、アルカリ水中でもほとんどイオン化しません。しかし、ベンゼンに付いている水酸基はフェノール性水酸基といって、弱い酸性を示します。つまり、水素イオン(H+)を放出します。アルカリ性の水中(おおむねpH8以上の水中)ではH+が解離して、フェノラートアニオン(C6H5O)となるので、イオン化して極性の高い部分と水分子の中の分極した水素原子との間の水素結合によって水分子に囲まれて水和します(※もちろん、もしプラス性を帯びた極性基があれば水分子中のマイナス性を帯びた酸素原子Oの部分と双極子-双極子相互作用します。極性基のプラス性を帯びた部分が水素原子Hであれば、それが関与する静電的相互作用は特別に水素結合と呼びます。水素結合は双極子-双極子相互作用の中の特別なケースといえます)。そういった箇所が多ければ分子として水に溶けて存在できることを意味します。

アルコール性の水酸基はイオン化しない分、フェノール性水酸基より極性は低いですが、分子中にたくさんあればその分子は水に溶けるでしょう。あくまでもこのタイプの色素分子ではベンゼン環があったりして親水基としてのアルコール性の水酸基はたとえ複数あったとしても水溶性を上げる効果は薄いということを言いたかったわけです。相対的にフェノール性水酸基の方が効果が高いということです。

でも、溶けると断言しなかったのは、一般に水溶性シアニン色素などはアンモニウムとか、スルホン酸ナトリウムなど強塩基、強酸が親水基として使われているからです。フェノール性水酸基は弱酸なので、親水基としては効果は薄いのが一般的です。だから「溶けそう」としました。しかし、たくさんあれば水に溶けることができると思うので、クルクミンの構造を見る限りでは、水に溶けるような気もします。

クルクミンのIUPAC名

実は、ケト⇄エノール互変異性という変化を起こして、下記の2通りの異性体がある一定の割合で存在します。

ケト型クルクミン
ケト型クルクミン

エノール型クルクミン
エノール型クルクミン

このケト型クルクミンのIUPAC名は(1E,6E)-1,7-bis(4-hydroxy-3-methoxyphenyl)-1,6-heptadiene-3,5-dioneです。どのように付けてあるのか説明します。

まず、炭素数7個の飽和炭化水素ヘプタンC7H16をもとに命名します。1番の炭素Cと7番の炭素Cにフェニル基(ベンゼン環から水素原子Hが1個取れた形をフェニル基といいます)が付いているので、1,7-diphenylheptaneとなります。ヘプタンの部分にはC=C二重結合が2個あり、1番と2番の間と6番と7番の間にあります。そこで、位置番号は1番と6番を使います。1,7-diphenyl-1,6-heptadieneとなります。次に、フェニル基に付いている置換基を付けましょう。メトキシ基(OCH3またはOMeと表記)と水酸基(OH)が付いています。これらの位置番号を決めます。フェニル基がヘプタンに繋がっているところの炭素Cが1番になります。そこから時計回りに数えてメトキシ基が3番、水酸基が4番という数え方と、反時計回り数えて水酸基が4番、メトキシ基が5番という数え方があります。ここでは前者を採用します。つまり、3,4-と4,5-では最も若い数字が小さい方の3を採用するということです。よって、4-hydroxy-3-methoxyphenylとなります。なぜhydroxyがmethoxyより先に来るのかというと、頭文字のアルファベット順だからです。並べる時は位置番号の若さは優先しません。この4-hydroxy-3-methoxyphenylは単純なphenylとは異なり、diいう接頭語は付けません。代わりにbis( )を使います。つまり、シンプルなものが2つある時はdiを使い、複雑なものが2個ある場合はbisを接頭語として、括弧の中に入れます。したがって、1,7-bis(4-hydroxy-3-methoxyphenyl)-1,6-heptadieneができました。

bisはdiと同じ2つという意味ですが、大きな原子団が2つある時はdiではなくbisを使い、括弧の中に大きな原子団を入れて表記します。

あと足りないのは、ケトンに分類される2つのカルボニル基です。ケトンの命名法は、アルカンalkaneの語尾のeをとってone(オン)を付けるので、ここでは2つあるのでdioneを語尾に付けます。位置番号は3番と5番の炭素なので、3,5-を使います。よって、1,7-bis(4-hydroxy-3-methoxyphenyl)-1,6-heptadiene-3,5-dioneとなります。

最後に、C=C二重結合の幾何異性体を指定します。C=C二重結合に置換基が2つ、それぞれ1個ずつ2つの炭素に付いている場合は、2種類の幾何異性体が存在します。一般にはシス型とトランス型と言ったりしますが、Z型とE型という表記法があります。シス型がZ型、トランス型がE型です。実際の形から判断するとトランス型がZ型で、シス型がE型に見えますが、ZとEは形を表わすものではなく、ドイツ語の単語の頭文字ですので、注意してください。zusammenとentgegenです。だから、シス型がZ型、トランス型がE型です。

そこで、1,6-heptadieneの部分の2個のC=C二重結合はどちらに相当するかというとトランス型、あるいはE型です。1番と6番の炭素なので、(1E,6E)-1,7-bis(4-hydroxy-3-methoxyphenyl)-1,6-heptadiene-3,5-dioneとなります。

同様の考え方でいけばエノール型のIUPAC名は(1E,4E,6E)-5-hydroxy-1,7-bis(4-hydroxy-3-methoxyphenyl)-1,4,6-heptatriene-3-oneとなります。エノールというのは英語ではenolで、eneとolをくっつけたものがenolとなっています。つまり、C=C二重結合1個とアルコール性水酸基OHが1個あることを示しています。エノール型クルクミンの構造式の中央付近に1個ずつ隣接して存在しているのがわかります。

それでは、また。