こんにちは。kuma&nomiです。

スカンクの悪臭は肛門傍洞腺(肛門嚢)から放出されるブチルメルカプタン(C4H9SH)、IUPAC名ではブタンチオール(butanethiol)といいますが、これを主成分とする分泌液です。くさい部分はSHの部分です。そのにおいは独特で硫化水素H2Sのにおいとか、にんにくのにおいで例えられます。スカンク臭と言われることもあります。

私はスカンクのおならを嗅いだことはありませんが、有機合成化学が専門なので、チオールとメルカプタンという名前の付いた化合物はめちゃくちゃ臭いことは知っています。

日常の中では、腐った鶏卵はとてもくさいですが、これはタンパク質中に含まれる20種類のα-アミノ酸のうち、L-システイン残基やL-メチオニン残基が分解して出来た硫化水素H2Sのせいです。火山の噴火口の近くや、温泉地帯も臭いです。硫黄の単体はくさくありませんが、硫黄化合物はくさいです。

プロパンガスは無臭なのでわざと悪臭物質が入れてあります!

このくささは人間の生活の中で利用されています。プロパンはにおいがないので、ガス漏れしてもわかりません。それでは危ないので、わざとにおいを付けてあります。チオール系ではIUPAC名エタンチオール(ethanethiol)、慣用名エチルメルカプタン(ethylmercaptan)やIUPAC名1,1-ジメチルエタンチオール(1,1-dimethylethanetiol)、またはブタンチオール、慣用名tert-ブチルメルカプタン(TBM:tertiary-butylmercaptan)です。エタンチオールは炭素数2個のチオールで、ブタンチオールは炭素数4個のチオールです。沸点が低いので、においとして感知しやすいわけです。これが炭素数12個のドデカンチオール(C12H25SH)やとか炭素数16個のヘキサデカンチオール(C16H33SH)だったらガスの中に混ぜてもガス漏れしてわかるような強烈なにおいはしません。いやなにおいであることは変わりありませんが・・・。私は個人的にはエタンチオールやプロパンチオールCH3CH2CH2SHのにおいは強烈だと思います。実験室でちょっと試薬瓶の蓋をひねっただけでも部屋にいられない感じです。普通はアンプルに密封して売られています。使う時はアンプルを割って開封してからが大変です。

L-システインもチオールの一種

L-システイン
L-cysteine

L-システイン(L-cysteine, 示性式はH2N-*CH(COOH)-CH2SH)はα-アミノ酸の側鎖にSH基を有するCH2SHが付いています。このようなR-SH型の化合物の総称はチオール(thiol)といいます(Rはアルキル基やその他の置換基)。似たような構造のα-アミノ酸にセリンというものもありますが、それは側鎖がCH2OHになっています。硫黄Sは周期表で酸素のOの下にあるので、同じ族にあるので化学的性質はある程度似ています。OHだったらアルコールで、その酸素Oが硫黄Sに変わるとthioのalcoholということでthiolとなります。別の呼び方でメルカプタン(mercaptan)というのもあります。水銀(mercury)と反応して黒い錯体を作ることに由来しています。

チオールは空気中で容易に酸化されてジスルフィド結合になります。タンパク質中のα-アミノ酸のL-システインはSHの形では存在せず、シスチンとなって架橋構造に寄与しています。体内でL-システインを作るためには、L-メチオニンを多く含む食べ物、肉類、青魚類、ナッツ類から摂ります。要するにタンパク質を多く含む食べ物です。

L-メチオニン
L-Methionine

L-システインは(R)-システイン

前の記事で書いたように、20種類のアミノ酸のうち、キラルなアミノ酸は19種類あり(グリシンH2NCH2COOHは光学活性ではない)、ほとんどL-体はS-体ですが、L-システインだけはR-体です。これは、側鎖の炭素に付いている硫黄原子Sの原子量32が他のα-アミノ酸のカルボキシル基の炭素に付いている酸素原子Oの原子量16より大きいので、優先順位の付け方が逆回りになってしまうからです。

L-システインはテレビのCMでも御馴染みのハイチオールCに含まれています。ハイチオールという製品名の中のチオールはL-システインの側鎖のSHのことを意味しているわけです。つまり、L-システインは化合物の分類ではα-アミノ酸であり、官能基による分離ではチオールです。

L-システイン残基の酸化還元反応とパーマネントウェーブへの応用

パーマをかけた髪の毛はL-システイン残基同士のS-S結合によって形状を記憶しています。一方、寝癖はペプチド結合のところのN-HとC=0が関与する水素結合です。だから、寝癖の場合は水道水を付ければ水H2Oがケラチンの立体構造を支えている水素結合に割り込んで切ってくれるので、髪の毛が元に戻ります。でも、パーマの場合は、髪の毛をある形に固定して、その形状をL-システイン残基同士のS-S結合によって記憶させているわけです。S-S結合は水素結合と違って共有結合なので、強いです。

一般に、R-SHとHS-Rが空気中で酸化されてR-S-S-Rになります。これは「チオールが酸化されてジスルフィドになった」といいます。これが元のR-SHとHS-Rに戻るのを「還元された」といいます。

パーマをかける時は、ちょっとくさい液体が使われますね。そこに髪の毛のケラチンの中の-S-S-結合を切る還元剤が入っているわけです。もちろん、L-システインのSH基よりも還元力が大きい(相対的に強い還元剤である)必要があります。もしそうでなかったらシスチン残基の-S-S-結合が2個のシステイン残基(-SHとHS-)になりません。

こうして髪の毛の中のタンパク質をほどいておいて、髪の毛をある形に固定して、その状態を保ったままで近くにあるSH基同士を酸化反応によって-S-S-結合にします。これによって、パーマがかかります。つまり、まっずぐの髪とパーマをかけた髪ではSH基の結合相手が変わっているわけです。-S-S-結合の組み替えです。

それでは、また。