こんにちは。kuma&nomiです。

ある特定のフルーツや野菜は夕方以降に摂った方がいいといわれています。それはソラレンという物質が関係しています。そこで、有機化合物をずっと扱ってきた私がソラレンの分子構造を見ただけでどんなことが言えるかについて書いてみたいと思います。

まず思ったのは、ソラレンの単語の綴りです。ソラレンですからsoraleneかsoralenかと思いましたが、psoralenとなっています。先頭にpが付く英単語は時々見かけます。pneumonia(肺の炎症性疾患の総称)とか、pseudo(偽りの、にせの、まがいの)とかです。

このソラレン、摂取してから日光に当たるとメラニン色素がたくさん生成するという物質なので、日焼けしたくない人や、しみを作りたくない人には夕方から摂取することが推奨されているという有機化合物です。ソラレンが含まれている果実はみかん類、きゅうり、キウイ、いちじくなどです。

日焼けしたくない人や、しみをつくりたくない人は、これらを朝から食べたらいけないというのです。私はそんなことは気にしないのでいつでも食べますが、気にする人にとってはけっこう大変なことですね。

ソラレンの構造式から色を予測

このソラレンの構造式は下記のようになっています。

ソラレン

この化合物はクマリンのベンゼン環にフランが縮合している形をしています。

クマリン(coumarin)
クマリン

フラン(furan)
フラン

この化合物の構造上の特徴は、まず、共役系(共役二重結合ともいい、単結合と二重結合が交互に繋がってできている範囲のこと)がそこそこ長いので、光の波長が紫外光から可視光になるぎりぎりの辺りの青い光を吸収しそうだということです。すると、その青い光の補色である黄色が反射して、私たちの目にはこのソラレンの色は淡い黄色に見える、あるいはぎりぎり無色に見えるかもしれない、ということです。

その判断には基準物質が必要です。無色の固体であるナフタレンよりは共役系が長くて、淡黄色固体であるアントラセンよりは短いので、淡い黄色ぐらいであるとう予想が妥当に思えます。(もちろん、発色団・助色団の影響もないとはいえないのですが、今回は無視します)

ナフタレン(naphthalene)
ナフタレン

アントラセン(anthracene)
ナフタレン

このようにして、構造式を見ただけで大まかな色を予測できることができます。もちろん、基準物質をもとにです。この場合はナフタレンとアントラセンを基準にしています。

ちなみに、このような平面性が高くて剛直な構造を有する共役系は、一般に蛍光性を有しています。もちろん、蛍光性をなくさせるような発色団や助色団が付いていたり、自由回転できるような共役系だった場合は蛍光色素とは言えないくらいの蛍光しか出さなくなるケースも多いです。吸収した光エネルギーが熱運動やエネルギー移動などで減るのですが、剛直な色素だとその損失がかなり抑えられ、たくさん残った光エネルギーが蛍光として出てきやすくなります。この割合が蛍光量子収率です。もちろん、吸収した光エネルギーを100%として、そのまま100%光として放出できるなら同じ波長の光が出てきますが、そんなことはあり得ないので、吸収した波長より長い波長の光(すなわち低エネルギーの光)が蛍光として放出されることになります。吸収した光より短波長の光が放出されることはないです。吸収したエネルギーより増えたことになりますから。

ソラレンがメラニンになるわけではない

構造式だけから判断すると、この化合物が直接メラニン色素になるわけではなさそうです。なぜならば、構造式の基本骨格が違うからです(まあ、基本骨格が変化することもないとはいえませんが)。直接的に、あるいは間接的にメラニンを活性化するといわれていますが、ソラレンには光毒性があるので、できるだけ紫外線を吸収しないようにメラニン色素が出動すると考えると納得できます。その結果、日焼けする、しみができるということになると考えれられます。

もし、このソラレンが自分自身でメラニンに変わると仮定すれば、黒っぽくなるためには共役系がかなり伸びなければなりません。共役系が無限に伸びるとすべての可視光を吸収するので黒くなります。絵の具をいろいろ混ぜ合わせたら黒くなっていくのでわかりますね。黒鉛(グラファイト)はかなり長い共役系(ニワトリ小屋の金網のようなイメージ)なので、黒いわけです。β-カロテンぐらいの長さだったらニンジンのような色なわけです。でも、メラニンの基本骨格はソラニンのそれとは異なるので、ソラニンがメラニンになるのではなく、「メラニン色素に出動を促す → 日焼けする、しみができる」と考えるのが分子構造的に見た場合は妥当です。

ここで注意してほしいのは、あくまでも私が言いたいことは、構造式を見ただけでもいろいろな予測ができる(構造からみた仮説が立てられる)ということです。実際の作用機序に関しては、いろいろな実験などをして専門家が結論を出すわけですので、誤解なきようお願いしますね。

共役系は基本的に平面構造

ちなみに、一般に共役系は平面構造です。例外的なものとして、フラーレンやカーボンナノチューブがありますが、グラファイトなどは平面が積み重なってできています。鉛筆で字が書けるのは、その平面どうしがずれることができるからです。同じ炭素Cからできているダイヤモンドが無色で固いのは、共役系ではなくて単結合だけでできていて、しかも平面ではなく正四面体構造をしているので、ずれることができなくて固いわけです。当然、字は書けないですが、そもそも色がありません。

まとめ

ということで、今日はソラレンの構造式だけからどのようなことが予測できるかについて思ったことを書いてみました。有機化学者は(というか、少なくとも私は)どのような考え方をするのか紹介しました。ソラレンがグラファイトのように黒っぽくなるのは分子構造的には難しそうだと思います。ソラレンは、その構造から判断すると剛直な分子なので、強い蛍光を出しそうです。水には溶けにくいと思います。光毒性のあるソラレンに光を吸収させないようにメラニンが増えると考えるとわかりやすいです。

それでは、また。