こんにちは。kuma&nomiです。

今回は温州みかんや、夏みかん、ダイダイなどに含まれる酸味成分のシネフリン(synephrine)の構造や命名法について書いてみようと思います。

シネフリンの構造

シネフリン(synephrine)
synephrine

構造は上の構造式のようになっています。示性式で書くと、HO-C6H4CH(OH)CH2NHCH3となります。

ベンジルアルコール(またはフェニルメタノール)のα-位にジメチルアミンCH3NHCH3から水素原子Hが1個取れた形の-CH2NHCH3が付いて、ベンゼン環の一番遠いところ(パラ位)の炭素上に水酸基(-OH)が付いたものです。

あるいは、フェノールC6H5OHのベンゼン環の4番の炭素に-CH(OH)CH2NHCH3が付いたものです。

p-シネフリン (p-synephrine) とも言われます。p-はパラと読みます。

(あくまでも構造上の特徴を説明するために便宜的にベンジルアルコールや-CH(OH)CH2NHCH3を用いただけで、合成法がこのような手順になっているわけではないので注意してください。)

ベンジルアルコール(フェニルメタノール)
phenylmethanol

フェノール
phenol

シネフリン(synephrine)のIUPAC名

シネフリン(synephrine)は慣用名です。その系統名(国際名、IUPAC名)は、フェノールの4番の炭素に-CH(OH)CH2NHCH3が付いたものとして命名すれば4-[1-hydroxy-2-(methylamino)ethyl]phenolとなります。フェノールはベンゼン環に水酸基が1個付いた化合物です。フェノールに置換基が付いた化合物として命名するならば、この水酸基が付いているベンゼン環の炭素原子Cが1番になります。そこから最も遠いところの炭素が4番となります。時計回りに数えるか、反時計回りに数えるかはケースバイケースです。ざっくり言うと、位置番号が小さくなるように命名します。

よって、4番の炭素に大きな置換基が付いたフェノールと考えると、4-[置換基]phenolとなります。この括弧[ ]の中に置換基の正式名称を入れれば完成です。4番の炭素に置換基が付いているフェノールの場合は、時計回りに数えても反時計回りに数えても同じです。

この場合、4-ethylphenolと考えます。ベンゼン環の4番の炭素にエチル基(CH3CH2-)が付いているフェノールです。

このエチル基に水酸基(-OH)が付いています。ベンゼン環と直接繋がっているその炭素が1番となります。そして、2番の炭素にメチルアミノ基(CH3-NH-)が付いています。これがフェノールの4番の炭素に付いています。よって、[1-hydroxy-2-(methylamino)ethyl]基がフェノールの4番の炭素に付いていることになります。

以上をまとめると、IUPAC名は4-[1-hydroxy-2-(methylamino)ethyl]phenolとなります。

シネフリンはなぜ酸味があるのか

シネフリンは温州みかん、夏みかん、ダイダイなどの果実に含まれている酸味成分です。つまり、弱い酸性を示します。たとえばエタノール(CH3CH2OH)の水酸基は通常は水素イオン(H+)を放出しないので酸ではありません。これをアルコール性水酸基といいます(ベンジルアルコールの水酸基もアルコール性水酸基です)。焼酎やウイスキーは水にエタノールが溶けているものですが、酸味はありません。これが空気中で酸化されて酢酸CH3COOHになれば酸っぱくなるはずです。

ところが、ベンゼン環に直接付いた水酸基は酸性を示します。でも強い酸性ではなく、弱い酸性です。このような水酸基をフェノール性水酸基といいます(ベンジルアルコールの水酸基はメチレン-CH2-で遮断されているのでフェノール性水酸基ではありません)。水溶液中で、だいたいpH8〜9ぐらいでちょうど半分の数のフェノールが水素イオン(H+)を放出してフェノラートアニオン(C6H5O)となるイメージです(興味のある人は酸解離定数pKaを調べてみてください)。強酸は電離度が1と考えるので、通常の条件では存在する分子すべてが電離して水素イオン(H+)を放出してイオン化すると考えてOKです。だから仮に同じ濃度の強酸と弱酸があったとしても、水素イオン濃度は強酸の方が高くなります。その結果、酸性が強くなります。これが強酸といわれる所以です。一方、酢酸CH3COOHは弱酸ですが、水溶液中、通常の条件では酢酸分子1000個あたり10個程度イオン化しているに過ぎません。それでも食酢はツーンときますよね。

結論として、シネフリンが酸味がある理由はフェノール性水酸基を持っているからです。

以上です。

それでは、また。