補酵素としてのテトラヒドロ葉酸の分子構造と機能

テトラヒドロ葉酸

葉酸はビタミンであり、テトラヒドロ葉酸(tetrahydrofolic acid, 略したTHF)の形で補酵素として機能します。テトラヒドロ葉酸は、1炭素元素団を基質(反応を受ける対象分子)に移動させる酵素の補酵素です。

テトラヒドロ葉酸は、その名前から、水素原子Hが4個、二重結合2ヶ所に付加した形の葉酸(つまり、二重結合2ヶ所が単結合に変わっている葉酸)という意味が読み取れます。分子構造がわかる命名になっています。水素原子Hが4個付加した二重結合の部位はC=N二重結合2ヶ所です。プテリジン環の5-位のNと6-位のCの間の二重結合と、7-位のCと8-位のNの間の二重結合に水素原子Hが4個付加します。だからテトラヒドロ(テトラは4、ヒドロはH)なのです。触媒される反応はカルボキシ化で、ヒトの中で葉酸が欠乏すると悪性貧血になります。哺乳類は葉酸を合成できないので、外から摂取する必要があります。なので、ヒトにとって葉酸はホルモンではなくビタミンになるわけです。

この分子の特徴は、水が水素結合や双極子双極子相互作用で付加して水和することができる部位が10ヶ所以上あることです。つまり、水に溶けやすいということがその分子構造から容易に推測されます。

3つのテトラヒドロ葉酸補酵素の構造式

ビタミンはヒトが体内で合成できない有機化合物です。それに対して、ホルモンはヒトが体内で合成できます。体内でビタミンは酵素反応で補酵素に変換されます。ただし、ビタミンCだけは例外です。それ以外のビタミンはすべて補酵素の前駆体です。

水溶性ビタミンは過剰に摂取しても、余ったものはすぐに体外に尿として排出されます。しかし、水溶性のない、あるいは水溶性に乏しいビタミンは、体の中の疎水的な環境(親油的な環境)に蓄積されます。

ビタミンである葉酸は体内で還元を受け、ジヒドロ葉酸を経てテトラヒドロ葉酸に変換された後に補酵素としてはたらきます。
 


N5-メチルテトラヒドロ葉酸

 


N5-メチルテトラヒドロ葉酸

5番の窒素原子N上にメチル基(-CH3)がついています。メチル基の転移を担っている補酵素です。

N5, N10-メチレンテトラヒドロ葉酸

 



N5, N10-メチレンテトラヒドロ葉酸

5番と10番の窒素原子Nがメチレン基(-CH2-)で繋がっています。メチレン基の転移を担っている補酵素です。

N5, N10-メテニルテトラヒドロ葉酸

 



N5, N10-メテニルテトラヒドロ葉酸

5番の窒素原子Nと架橋しているメチレン基(-CH2-)の間二重結合が形成されて、Nの形式電荷が+1になった形です。水素原子Hと共有電子対がはずれた形です。ホルミル基(アルデヒド基)の転移を担っている補酵素です。

DNAを合成するために必要なチミン(T)は、N5, N10-メチレン-THFを補酵素とするチミジル酸合成酵素によりウラシル(U)から合成されます。つまり、ウラシルにはメチル基がなく、チミンには1個あることから、テトラヒドロ葉酸は、1つの炭素からなる原子団を基質に移す反応を触媒する酵素の補酵素であることがわかります。1炭素原子団はメチル基(CH3-)、メチレン基(-CH2-)、アルデヒド基(ホルミル基-CHO)などがあります。

N5-メチル-THFはメチル基の転移を触媒します。N5, N10-メチレン-THFはメチレン基の転移を触媒します。N5, N10-メテニル-THFはホルミル基の転移をを触媒します。この補酵素はDNAやRNAに含まれる塩基および芳香族アミノ酸の合成に必要とされます。だからこそ、妊活にも必要なサプリメントとして人気があるわけです。

遺伝子にかかわっているビタミンであるため、生命にとってとても重要な有機化合物であることは想像に難くありません。

 

次のトピックは、知っておきたい食品添加物のことです。