こんにちは。kuma&nomiです。

今日はビタミンAとは何かということと、ビタミンA群の化合物の慣用名とIUPAC名についてです。

ビタミンA(Vitamin A)とは、レチノール(Retinol)、レチナール (Retinal)、レチノイン酸 (Retinoic Acid)の3種と、これらの3-デヒドロ体、およびその誘導体を含めた化合物群の総称のことをいいます。

レチノールはビタミンAアルコール、レチナールはビタミンAアルデヒド、レチノイン酸はビタミンA酸ともいいます。レチノール、レチナール、レチノイン酸はこれらをビタミンA1とも呼ばれます。これらはβ-カロテンを半分に切った分子の切った部分の官能基が違うだけです。だから、ビタミンAはβ-カロテンからつくられることが予想できます。

レチノール、レチナール、レチノイン酸の3-デヒドロ体はビタミンA2とも呼ばれます。3-デヒドロ体とは、3-位から水素H2が取れてC=C二重結合ができたものという意味です。実際に下記のデヒドロレチノール(Dehydroretinol)の構造式を見ると、レチノールよりもC=C二重結合が1個多いことがわかります。デヒドロレチナール、デヒドロレチノイン酸も同様にレチナール、レチノイン酸の3-位から水素H2を取れば(つまりdehydroすれば)できます。deは「ない」、hydroは水素を意味しています。

レチノール(Retinol)
レチノール

レチナール(Retinal)
retinal

レチノイン酸(カルボン酸形)(retinoic acid)
retinoic acid

デヒドロレチノール(Dehydroretinol)
レチノール

上記のレチノール、レチナール、レチノイン酸、デヒドロレチノールは慣用名です。慣用名なのですが、レチノール(Retinol)はアルコール性水酸基があることがわかるように付けられています。レチナール(Retinal)はアルデヒドであることがわかるように慣用名が付けられています。同様にレチノイン酸は酸であることがわかるように付けられています。ただ、これだけではカルボン酸であるということはわかりません(ほかに、硫酸、硝酸、リン酸などの可能性もあります)。しかし、レチナールのアルデヒドが酸化されてカルボン酸になったと考えればカルボン酸であることが理解できます。

それでは、IUPAC名を付けてみましょう。

レチノール、レチナール、レチノイン酸のIUPAC名

レチノール(Retinol)はアルコールなので、-olが語尾にきます。IUPAC名は(2E,4E,6E,8E)-3,7-Dimethyl-9-(2,6,6-trimethyl-1-cyclohexen-1-yl)-2,4,6,8-nonatetraen-1-olです。

レチナール(Retinal)はアルデヒドなので、-alが語尾にきます。IUPAC名は(2E,4E,6E,8E)-3,7-Dimethyl-9-(2,6,6-trimethyl-1-cyclohexen-1-yl)-2,4,6,8-nonatetraenalです。アルデヒドの場合はアルデヒド基が分子末端(1-位)にあることが明らかなので、-1-alとはしません。もし、分子の末端になかったらそれはケトンになります。その時は>C=0の位置番号+oneとなります。

レチノイン酸(Retinoic acid)はカルボン酸なので、-oic acidが語尾にきます。IUPAC名は(2E,4E,6E,8E)-3,7-Dimethyl-9-(2,6,6-trimethyl-1-cyclohexen-1-yl)-2,4,6,8-nonatetraenoic acidです。カルボン酸の場合もアルデヒドの場合と同様にカルボキシル基が分子末端(1-位)にあることが明らかなので、-1-oic acidとはしません。

細かいところをもっと詳細に説明します。ここではレチノールの場合を説明します。

まず、六角形の付いたギザギザの長い部分が主鎖になります。炭素数は9個あり、右端には水酸基OHが付いています。よって、主鎖は飽和炭化水素C9H20であるnonaneとなり、それに各種置換基が付いたものとして命名します。

ちなみに飽和炭化水素の炭素数と名称は、

CnH2n+2 飽和炭化水素(アルカン) alkane
n=1:CH4 メタン methane
n=2:C2H6 エタン ethane
n=3:C3H8 プロパン propane
n=4:C4H10 ブタン butane
n=5:C5H12 ペンタン pentane
n=6:C6H14 ヘキサン hexane
n=7:C7H16 ヘプタン heptane
n=8:C8H18 オクタン octane
n=9:C9H20 ノナン nonane
n=10:C10H22 デカン decane
n=11:C11H24 ウンデカン undecane
n=12:C12H26 ドデカン dodecane

です。

この場合はアルコールとして命名することにします。nonaneに付いている水酸基のところの炭素原子Cを1番とします。すると、9番の炭素に6員環のシクロヘキサンが付いていることになります。このシクロヘキサン環(cyclohexane環)はC=C二重結合が1個あるので、シクロヘキセン(cyclohexene)となります。また、nonaneに繋がっている炭素がcyclohexene環の中の1番となります(nonaneの中の1番とは別物ですが、プライムを付ける必要はありません)。よって、ここまでを組み立てて整理すると、9-(1-cyclohexen-1-yl)-nonan-1-olとなります。1-ylは1番の炭素がnonaneに繋がっているということを示しています(アルキル基ではないけれどもアルキル基のようなイメージで捉えてOKです)。

次に、シクロヘキセン環に付いている3個のメチル基を入れましょう。シクロヘキセン環の中の2番の炭素に1個、6番の炭素に2個付いています。よって、2,6,6-trimethylを-1-cyclohexen-1-ylの前に付けます。すると、9-(2,6,6-trimethyl-1-cyclohexen-1-yl)-nonan-1-olとなります。

次に、主鎖の上にメチル基が2個あるので、それを入れましょう。3-位と7-位の炭素上にあるので、3,7-dimethylを付けます。すると、3,7-Dimethyl-9-(2,6,6-trimethyl-1-cyclohexen-1-yl)-nonan-1-olとなります。

次に、nonane上にC=C二重結合が4個あります。場所は、2-位の炭素と3-位の炭素の間と、4-位の炭素と5-位の炭素の間と、6-位の炭素と7-位の炭素の間と、8-位の炭素と9-位の炭素の間の4ヶ所です。よって、2,4,6,8-tetraenを入れます。tetraは4を表わす接頭語で、enはC=C二重結合を意味します。mono(1), di(2), tri(3), tetra(4), penta(5), hexa(6), hepta(7), octa(8), nona(9), deca(10)です。すると、3,7-Dimethyl-9-(2,6,6-trimethyl-1-cyclohexen-1-yl)-2,4,6,8-nonatetraen-1-olとなります。

最後にC=C二重結合の幾何異性体の種類を指定します。C=C二重結合の両側の炭素にに置換基が付いている場合にはシス型とトランス型の2種類の幾何異性体が存在します。シス型はカタカナのコのように置換基が同じ側に来ている場合に相当します。トランス型はアルファベットのZのように、置換基が反対側に付いている(C=C二重結合を中心にして点対称になっている)形に相当します。シス型はZ型、トランス型はE型に相当します。文字の形からはトランス型がZ型、シス型がE型のような気がしますが、そうではなので注意してください。ドイツ語のzusammen, entgegenから来ています。4個のC=C二重結合はすべてE型(トランス型)なので、括弧を使って(2E,4E,6E,8E)として、先頭に付けます。よって、(2E,4E,6E,8E)-3,7-Dimethyl-9-(2,6,6-trimethyl-1-cyclohexen-1-yl)-2,4,6,8-nonatetraen-1-olとなります。

これで詳細の説明は終わりです。これについてはレチナール、レチノイン酸の場合も全く同じです。

それでは、また。